糖尿病と肝疾患が併発しやすい理由
糖尿病患者の2割から3割が併発する肝疾患
過労、過食、運動不足、ストレスやアルコールの飲み過ぎなど、乱れた生活習慣に身を置く現代人は、それに伴う様々な病気を患ってしまうリスクを抱えています。
その中でも自覚症状を伴わない病気については、気が付かないままに進行させてしまうことも多く、それによって別の病気を合併することも珍しくありません。
糖尿病はそういった生活習慣病のひとつであり、血糖値が高い状態が維持されることによって様々な病気のリスクファクターとなります。
日本糖尿病学会が行った糖尿病患者の死因に関する全国調査の結果によると、日本人の糖尿病患者のうち12.2%が肝癌で、5.3%が肝硬変で亡くなっています。
つまり「糖尿病」によって「死に至る」リスクの最も高いもののひとつが「肝疾患」であるということです。
血液検査や健康診断で血糖値や中性脂肪の数値を気にされていた方、肝臓の項目を気にされていましたか?肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれる程に、不調を感じにくい器官です。「頭がガンガンする」「胃がキリキリする」と感じることはあっても、「肝臓が痛い・・・」なんて思ったことは一度もないですよね。それくらい、肝臓は痛みを感じない臓器なのです。知らず知らずのうちに肝臓に負担をかけてしまうような生活をされていても、肝臓は悲鳴をあげませんから、気付かずに弱らせてしまっているということが起こり得ます。「高血糖」でいらっしゃる方は、必ずこの「肝臓」の数値にも目を光らせておいて下さいね。
肝臓の働きについて
肝臓には、「合成する」「分解する」「蓄える」という3つの働きがあります。
ひとつ目の「合成」についてですが、私たちが食事を摂った時、胃や腸で吸収された栄養素は一度全て肝臓に集められます。そして肝臓は集められた栄養素を、身体の各部が最も吸収しやすいかたちに「合成」し、送り出します。例えば「炭水化物」は、胃や腸で「単糖」の状態になってから肝臓に送られ、「フラクトース」「ガラクトース」「グルコース(ブドウ糖)」などに合成されます。脂質やたんぱく質についても同様です。
ふたつ目の「分解」ですが、これは身体にとって有害なもの、例えば食品添加物やアルコールなどを「解毒」する作用のことです。お酒をよく飲む方の肝臓の機能が弱まってしまうのは、この「アルコールの分解」に肝臓が疲れてしまうからということになります。
3つ目の「蓄える」働きとは、合成された成分を肝臓内に貯蔵し、必要なときに放出する働きのことです。貯蔵される成分の中には、エネルギーとして使い切れなかったもの、摂り過ぎてしまった余分なものも含まれます。
これらのことから、食べた物は基本的に肝臓を経由し、肝臓に何かしらの影響を与えるということがお分かり頂けると思います。ですから、偏食や過食、暴飲暴食など、食生活の乱れは肝臓に大きな負担となるのです。
肝臓に蓄えられている物質の中には、使い切れなかった余分なものも含まれているということをお話しいたしました。
血糖値が上がると、インスリンの分泌により血液中の糖はまず初めに「エネルギー源」となります。次に「ブドウ糖」として筋肉などの細胞組織の中に蓄えられます。それでも血液中にまだまだ糖が存在し、使い切れずに余ってしまっている「糖尿病」である場合、余った糖は全て「中性脂肪」となり、脂肪細胞や「肝臓」に蓄えられます。つまり、「血糖値が高い状態」というのは、必然的に「肝臓に脂肪がたくさん蓄えられている状態」であるということが言えるのです。
運動をしないためにエネルギーとして糖が消費されることもなく、筋肉が少ないためにそこに蓄えられる糖の量も少なく、それでも血液中に糖が過剰に存在している状態が続くと、やがて肝臓に蓄えられる糖(中性脂肪)も上限を迎えます。この状態の肝臓を「脂肪肝」と言います。
脂肪肝は余分な糖を中性脂肪として蓄えられないだけでなく、その中性脂肪をブドウ糖として血液中に放出してしまう働きもあり、血糖値の上昇に拍車をかけてしまいます。これが糖尿病と肝疾患の関係が深い所以です。

